メトロより愛をこめて

散れば咲き散れば咲きして百日紅

夢占い

 海の浅瀬で、好きな人とちゃぷちゃぷ遊んでいる。冴えない曇りの日だ。深さはだいたい膝くらいで、あまり綺麗という印象のない海だった。砂浜に上がろうという段になって、より浅瀬の方を見遣ると、50cmくらいの小さな鮫が帯のように犇めいていて、どうやら跨がないと陸には行けないようだった。気持ち悪いし、怖いと思ったが、跨いで砂浜に上がった。波打ち際をわたしが歩いて、その手を繋いでもらっていた。わたしは、裸足の足で星の砂を踏みつけて歩きながら、「来年もまた来ようね」と言っていた。死んだ鮫の、ちぎれた背鰭が落ちていた。泣き出したい気持ちだった。星の砂を踏むのも嫌だったし、来年は来ないのを知っていた。彼は優しかったし楽しかったから、余計に悲しくなってしまった。さっきまで汚いと思っていた海が、急に綺麗に見えはじめた。暗い色の海を掬ってもただの透明な水で、「さっきまでは確かに海だったのに」と大好きな寺山修司が言っていたのを思い出した。

ずっと砂浜を歩いていると、スカスカの吊り橋があった。わたしは縄梯子を登って、その吊り橋を渡ろうとした。あまりに揺れそうなので、「怖い」と言って引き返した。彼も同じように引き返してきた。かなり高いところから飛び降りて戻ってきたので、「大丈夫?」と駆け寄った。

 

 ここで目が覚めた。汗がびっちょりで、暗い気持ちだった。錠剤で無理やり眠りに引きずり下ろされる夜は、たいていこういう嫌な夢を見る。わたしの家にはフロイトの夢解析の本がある。幼い頃から夢を見ては照らしていた。例に漏れず、今日もやった。

 

“鮫”

  ・精神的な危機

  ・制御できない力

なるほど……。帯のようになっていて、どうしても跨いで越えないといけなかった。逃げ場はなく、乗り越えなければいけない危機らしい。

 

“海”

  ・汚れた印象の海は、精神的な不安を表す。

  ・好きな人と波打ち際を出たり入ったりすることは、性的なメタファー。

  ・穏やかで綺麗な波は、新しい恋愛や、落ち着いた精神状態を表す。

 彼と2人で汚い海に入っていて、鮫を跨いで海から上がると突然海が綺麗に見える。別れを予感して手を繋いで歩く……。2人でいると精神的な不安に苛まれて、海から上がってしまうと落ち着いた精神状態になれるが、わたしはそれが嫌らしい。

 

“砂”

 ・過ぎた過去のシンボル。砂が印象に残っているようなら、その過去への未練。
・砂のある場所に誰かといるのなら、その人との関係が終わってしまっているという暗示。

彼との終わった関係を、踏みつけるのが嫌だったんだろうね。星の砂だった……過去がよく見えるんだろう。

 

“吊り橋”

 ・新たな恋人

 ・大きな決断を迫られている、今自分が転機にあることの暗示

渡りたくなくて降りてきて、彼のところに戻ってしまった。言わずもがな。ただ、彼も戻ってきた。ただの願望か……。

 

恋人として彼に会ったのは2ヶ月ぶりだった。わたしは好きな人の前だとこんな感じだったんだなあ、とぼんやり思い出して、夢を占いながらまた泣いた。